4次元空間(時間を入れたら5次元)というと、SFやオカルト的に聞こえます。しかし4次元空間の想像に慣れると、4つの要素を同時に比較や処理できたり何かと便利です。
機械学習などのデータ分析では多次元ベクトル空間なるものを想定しますし、僕らが住んでいるこの世界がそもそも、3次元でも4次元でもなく、11次元(譲歩しても10次元)というのが物理学上の通説になってます。
11次元宇宙の話は別の機会にするとして、まずは4次元空間を図示してみましょう。
最後の1枚、いかがでしょうか。8つの立方体をうまくたたむと、4次元の超立方体ができます。
例えばこちら(答え)です。答えを見ても図示だけでは納得しづらい問題なので、何でそうなるのかを低い次元から追ってみます。
ひとつ上の次元を想像するということ
人間の脳は3次元に慣れているので、4次元を想像しようとしても、最初の取っ掛かりが見つからないという問題があります。そこでまずは低い次元からイメージしてみます。
1次元空間は、線です。平均台の上を歩いているような世界観です。目の前に誰かがいたら、その人を追い抜くことはできません。上下左右が存在しないので「避ける」という行為が成り立ちません。
2次元空間は、平面です。お掃除ロボット、ルンバの世界観です。ルンバは段差を乗り越えることができません。ルンバにとって段差は段差でなく、無限の高さをもつ壁(or 谷)です。「上下」の概念がないので、何かを「上から」乗り越えるという発想が成立しません。
ルンバに3次元を教えようとしても、ルンバには想像がつきません。机の上からリンゴが落ちてきても、それは上(3次元の方向)からやってきたのではなく、無から、すなわち突如目の前に現れたように認識されます。
横スクロール型ゲーム、マリオの世界観も同じです。前方や上方から相手が来るのはいいとして、ゲームのディスプレイの、手前から奥に向かって敵が飛んできたらどうでしょうか。マリオ的には「そっち」が向けないので、敵の存在に気づいたときにはもう接触していることになります。
同じように僕ら人間も、4次元方向の「そっち」を向くことはできません。
1、2、3次元から見える法則性
一つ上の次元には「向けない」ことが分かったところで、最初の図示の問題に戻ります。
1次元の線は、2つの点と、それを結ぶ1つの辺からなります。
2次元の正方形は、頂点が4個、辺が4個、面が1個です。
3次元の立方体は、頂点が8個、(以下略)です。なんとなく法則性がありますね。
4次元の超立方体なら、頂点は16個っぽい気がします(2→4→8→16)。他も全部いい感じに埋めると、こうなります。
次元 | 頂点 | 辺 | 面 | 立方体 |
---|---|---|---|---|
1(線分) | 2 | 1 | ||
2(正方形) | 4 | 4 | 1 | |
3(立方体) | 8 | 12 | 6 | 1 |
4(超立方体) | 16 | 32 | 24 | 8 |
さきほどの答え(下図)が、この表に合致しているのが見て取れます。この超立方体の図では、4次元を2次元平面に描いているので、その「超立体性」は失われています。構成するそれぞれの立方体も、ゆがんで引き伸ばされてます。それでも点と線、面、立方体の関係は保たれています。
(Wikipediaには、4次元超立方体を立体視で3次元に落とし込んだ、3D視のgif動画があります)
壁をすり抜ける
4次元空間が移動できると、不思議なことになります。分厚い鉄の箱に閉じ込められても、箱を壊さずに出てくることができるのです。それはまさに、壁に囲まれたルンバを3次元方向に持ち上げれば、壁の外に出られるのと同じです。
ちょっとだけ4次元方向に寄り道すれば、3次元の人からは消えたように見えます。消えた後に、壁の外側の3次元空間に「着地」して戻れば、壁抜け完了です。
何の役に立つの?
4次元超立方体の形を知っていても、あまり得することはありません。でも、3次元が当然と思っていたところへの「実は4次元以上もあるんじゃん!」という気付きによって、見える世界観が広がり得る気がします。
3つしかないものは、その「3つ」という数字性を意識することなく、単に名前がついて完結しがちです。方向だったら、「前後・上下・左右」ですし、物質の状態は「固体・液体・気体」で終わりです。でも、そこに「4つ目」が登場することで「あれ、4つ目があるなら5つ目も6つ目もあるんじゃない?」と、どこからか漂ってきた拡張性が感じられるようになります。
固体、液体、気体以外にある「プラズマ」は、物質の第4の相です。ほかにも実は沢山の相があります。
4次元を意識することで1次元や2次元の理解も深まり、数学的な次元、統計学や機械学習に登場する次元、宇宙論としての次元など、いくつかのものを「次元」という一つの物差しで測ることができます。
人類が幼少期からVRで5次元や6次元と日常的に触れ合っていたら、数学も物理学も、経済学や医学までも、今よりはるか遠くまで、あっという間に発展するんじゃないかと思っています。